非営利的なものとの融合

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  さまざまな主体が参加するやわらかな結合の帰結として、生産者と消費者、組織人と私人、営利と非営利といったものの境界があいまいになっている。今日的に重要な点は、境界を超えて自発的に集まった者の相互作用に、付加価値や新しい問題解決の方法(金子1999)が存在することである。

  ネットワーク上ではパソコン通信が主流であった時代から特定のテーマに関心をもつ者が集まり、参加者が意見や情報を交換し、蓄積することがおこなわれており、インターネットのWebサイトでも、参加者が情報を書き込んでいく電子掲示板や、リアルタイムでコミュニケーションするチャットなどの機能を備えたWebサイトがさまざまなテーマで数多く存在している(コミュニティ・サイト)。非営利のコミュニティ・サイトだけでなく、オンライン・ショッピングのサイト、オークション・サイト、ポータル・サイトなど営利を目的にしたサイトにも、積極的にコミュニティ機能が設けられている。Eコマースを成功させるには、まず経済行為を前面に出さず、コミュニティをつくりあげてからその一部として商活動をおこなうというビジネス・ストラテジーさえあらわれている(ヘーゲル・アームストロング 1997)。

  ネット上で交わされるユーザー間のさまざまな意見が製品開発に生かされることは珍しくない。従来からユーザーがイノベーションに加わる現象は見られたが、企業にとっては顧客間のインタラクションやネットワーク上で自発的に発生したコミュニティとどのようにつきあっていくかがこれからの大きな課題である(國領1999;佐々木・北山2000)。企業がおこなってきたマーケティング、ユーザー・サポート、製品開発等の機能の一部をユーザーが担ってくれるという点ではプラスに働くが、悪いうわさがネットワーク上で広がったり、告発サイトが世間から過剰に注目されるなどの負の側面も見逃せない。 生産者とユーザーの境界がもっとも見えなくなってきている分野はソフトウェアであろう。多くのソフトウェアが、必ずしも営利を目的とせず自ら使うためや創作の喜び、ネット上で評価されることを動機としてつくられ、無料でネットワークを通じて配布されたり(フリーウェア)、ユーザーが試用してみて良ければ比較的廉価な料金を支払うことで利用できる(シェアウェア)(宮垣・佐々木1998)。フリーウェアの一種でソフトウェアのプログラムの内部が公開されているオープン・ソース・ソフトウェアの中には、ネットワーク上で多数の開発者が参加して開発されたオペレーティング・システム(OS)のLINUXのように商用ソフトウェアをおびやかす存在にまで成長したものが現れた。企業のヒエラルキーの中で開発されるよりも自発的に集まった開発者の相互作用の中で生み出されるもののほうが優秀であるということもおこってきたのである(Raymond 1999)。

  境界を超えてひろがっていくつながりは、従来からあるつながりとまったく無関係に発展しているわけではない。例えば、地縁は情報産業の発展に極めて大きな意味を持っていた(Saxenian 1994)。地域社会や産業集積、教育機関といった古くあるつながりとITによって新たに結びついた関係が交わったところに真に深みのある関係が生まれていくのであろう。

【参考文献】

金子郁容(1999)『コミュニティ・ソリューション』岩波書店.

ヘーゲルIII世, J.・A.G. アームストロング (1997)『ネットで儲けろ:ネットゲイン』日経BP社.

佐々木裕一・北山聡 (2000)『Linuxはいかにしてビジネスになったか―コミュニティ・アライアンス戦略』NTT出版.

Granovetter, M.S. (1973) "The Strength of Weak Ties," American Journal of Sociology, Vol. 78, pp. 1360-1380.

宮垣元・佐々木裕一 (1998)『シェアウェア』NTT出版.

Raymond, E.S. (1999) "The Cathedral and the Bazaar," O'Reilly.

Saxenian, A. (1994) "Regional Advantage," Harvard University Press.